スズメバチの基礎知識

先に説明したようにスズメバチの種類によって若干の違いはありますが、大まかな生態はほとんど同じです。

暖かい季節になって冬ごもりから覚めた女王は、樹液やアブラムシの甘露をなめたりして体力を回復させ、巣作りをする場所を探します。

いい場所が見つかったら巣作りを開始、最初に生んだ卵が働きバチとして羽化するまで(だいたい1ヶ月ぐらい)は女王が一頭でエサ集めや巣作りをします。その後働きバチが数十頭クラスになると女王は巣にこもり、産卵に専念します。だいたい6〜7月ぐらいです。

これから夏にかけて加速度的に巣は大きくなります。キイロスズメバチ、モンスズメバチ、チャイロスズメバチは夏に巣の引っ越しをします。

秋、オスバチとメス(新女王)バチの幼虫が生まれてくると、新しい働きバチは育てられなくなります。そのため次第に働き手が減ってゆくので、今まで育ててきた幼虫を引き抜いて他の幼虫のエサにしたり、巣の外に放り出してしまいます。秋に巣の近くに沢山の死んだ幼虫が落ちているのはこれです。

やがてオスバチ、次いで新女王バチが羽化、性成熟すると巣を飛び立ち、交尾をして新女王バチは越冬生活にはいります。オスバチと、巣に残った働きバチは静かな余生をおくり、死んでいきます。

冬、雪の降る頃には全てのオスバチ、働きバチはいなくなり、巨大になった巣も空になります。次の年以降にこの巣を再利用することはありません。

そして、

越冬生活にはいった新女王バチが、冬を越し、春になって活動を始め……と、営みが繰り返されるのです。

ツマアカスズメバチ

見た事無いです。

ツマアカスズメバチナナホシテントウ

それもそのはず、いまのところ長崎県の対馬にしかいません。でも、いずれ日本本土にも上陸してくる可能性があり、なんとか食い止めようと環境省でも注意している外来種です。

元々は大陸に分布するスズメバチで、平成24年に対馬市で初確認され、その後の調査・駆除では

……情報を正確にしようと環境省のホームページを見ると、今年の10月に大分県大分市で営巣が確認されたようです。

http://www.env.go.jp/press/106070.html

なんせ、生態系への大きな影響が考えられる外来種のスズメバチが韓国ルートで日本に侵入してきている、ということです。現時点で滋賀県での確認はありませんが『人ごと』とは簡単に言えない問題です。

チャイロスズメバチ

レア・スズメバチの『チャイロスズメバチ』です。

駆除依頼を受けることはほとんどありません。

チャイロスズメバチナナホシテントウ

働きバチの大きさはコガタスズメバチやモンスズメバチよりちょっと小さめ24ミリ程度。でも体色は全く違い、頭と胸は赤茶色、腹は黒色です。

非常にレアな種類で私もほとんど出会った事がないのですが、これは2016年の7月末ごろ、某ゴルフ場に作られていた巣です。

チャイロスズメバチの巣

攻撃的なハチで、巣に近付くと地表付近を飛び回って威嚇してきました。

駆除後、撤去した巣はまだ小さかったのですが、よく見ると写真の下の方にモンスズメバチの死骸があります。

実はこのチャイロスズメバチは『他のスズメバチ(キイロやモン)の巣に女王が単独で入り込み、元々の女王を殺して巣を乗っ取る』というかっこいい(!?)習性を持っています。

乗っ取られたがわの働きバチたちは、女王が入れ替わってもそのまま巣作りや子育てを続けます。でもその後生まれてくるのは当然ながらチャイロスズメバチなので、いつしか巣は完全にチャイロスズメバチのものになってしまうのです。

この写真の巣も駆除した中にモンスズメバチが混ざっているということは、元々はモンスズメバチの巣だったと思われます。

自然って面白い、ていうか……考えたら人間でも似たような事は起こるような……。こわー。

クロスズメバチ・シダクロスズメバチ

これはあれですわ。美味いやつ。

『クロスズメバチ』『シダクロスズメバチ』

岐阜や長野の郷土食『蜂の子』といえば、この2種の幼虫・サナギです。

このブログでも過去に何度も紹介しました。

クロスズメバチナナホシテントウ

小さい。小さくて可愛い。

知らない人が見たらハエかな?黒っぽいミツバチかな?と思われることでしょう。

オオスズメバチと同じように山で土中営巣します。ごくまれに逆さまにした植木鉢の中とか、鳥の巣箱の中とかで営巣したコロニーの駆除依頼があります。

『蜂の子』を食する地域では、地方によって呼び名が沢山あります。タカブ、ヘボ、ジバチ、スガラ、スガレ、スガリ、ハイバチ、ジスガリ……。滋賀県の食文化としては、あまり馴染ありませんが、岐阜や長野などは良質なタンパク源として古くから親しまれてきたようです。